看護師をしていると、注射を打つ機会がたくさんあります。とくに、採血や点滴などは看護師の主な仕事ですし、インフルエンザの季節が近付くと、ワクチン注射をします。そんな慣れた注射でも注意が必要なのです。
先日、知り合いのスタッフがインフルエンザの予防接種に来ましたので、医者の問診を受けてもらい、いつも通りワクチン接種を行いました。気心が知れた相手なので、冗談交じりに会話しながらワクチン接種を行い、後片付けをしているときに急にその知り合いが倒れたのです。一瞬意識がありませんでしたが、次第に回復して意識も戻り、呼吸も問題ありませんでした。原因は「血管迷走神経反射性失神」でした。
彼女は、以前、採血で倒れたことがあり、その後はベッドで横になって採血をしてもらっていたようでしたが、まさかインフルエンザワクチンで倒れるとは考えていなかったようです。自分が倒れてしまうのは、採血で血を抜かれ、貧血になってしまうからと考えていたようです。
しかし、「血管迷走神経反射性失神」は、血を抜かれたことによる貧血ではなく、針を刺されたショックで自律神経のバランスが乱れるために起こるものなのです。このように私たち看護師には知られている知識ですが、患者さんは間違った認識をしてしまうこともあります。これが良い教訓となり、今後は患者さんにちゃんと伝わるように、あたりまえのことでも丁寧に説明することが大切だと勉強になりました。
外部からの刺激を受けることにより強いストレスを感じ、反射的に血管迷走神経が反応して血圧を下げてしまい、脳に送られる血流が減り失神が起きるものです。この予防方法ですが、この失神は心因性の発作で、不安や緊張を感じるために起こりやすいものです。そのため、以前に失神を起こしたことのある人は注射の際に気を付けていれば、予防することができます。事前に医者に伝え、横になって注射を打ってもらうなど、考慮してもらいましょう。寝不足、疲労、ストレスの溜まった状態があるといつもより失神が起こりやすくなってしまうので、普段から体調を整えるようにすることが大切です。
失神が起こるときには前兆があります。異変を感じたら、横になって休むようにしましょう。前兆としては視野がせまくなる感覚、目の前が暗くなる、血が引くような感覚、冷や汗が出る、吐き気がする、眩暈がする、あくびがでる、などがあります。失神により無防備に倒れてしまうと頭部などを打撲するなど、最悪のケースもありますので気を付けるようにしましょう。